自己アイデンティティーを超えて
島暮らしは2年目のサイクルが始まり、春には畑
を耕したり種を蒔いたり、命を育む最初の仕事が
たくさんあります。
冬の間、枯れて見えた草木も新しい柔らかな葉を
つけ、気温が上がるごとに勢いづいてきています。
この家は古民家なので隙間だらけで冬は寒いです
が、ちょうど今は気持ちのいい季節です。
こうした家は、昔、家人が基本的には家にいた暮
らしをしていたころの造りです。
この家にも昔は囲炉裏や掘り炬燵があったかもし
れません。
現在では床揚げされているところも、もともとは
土間だったに違いなく、外の畑から土の付いたも
のをそのまま奥の台所まで運び調理していたので
しょう。
いつも誰かが家にいる―そのような暮らしの中で
作られたデザインです。
その家に越して住んでみると、100年の間に人の
暮らしがどれだけ変わったのかを感じざるをえま
せん。
農業や林業や漁業、つまりそこにある自然を相手
に生業を立てていたころ、どこに誰が住んでいる
のか、そうしたことが良くも悪しくも周知の事柄
であった頃、人が持つ自己アイデンティティーは
今よりもシンプルだったと思います。
どこの誰がしは何をする人ぞ、という具合にです。
18世紀後半の産業革命は、それまでのアイデンテ
ィティーを複雑にする、最初の大きな出来事だっ
たでしょう。
自宅から離れた職場でのアイデンティティーが新
たに生まれたからです。
多くの男性は定年を迎えると職場でのアイデンテ
ィティーを失い、自分を見失ってしまいがちにな
ると聞きます。
もしも表層にしか気づきがなくて、役職や立場、
他者からの評価だけを頼りに「自分は誰か」を知
ろうとしてきたのなら、それがすべて無くなった
時どうなるのか、十分に想像ができるでしょう。
これは何も世間に限ってのことではありません。
どんなスピリチュアルな世界であってもマインド
の習性は変わらないので、その環境の中で同じよ
うにアイデンティティーを作りだすものです。
以前、長くOSHOメディテーションリゾートに滞在
しワークしていた頃、ある部門のコーディネータ
ーを務めていました。
そこには50数名の、約15か国からの異なる文化背
景を持つワーカーが集っていました。
そんな多様な人たちと日々やり取りして働くのは
ところがある時、とある出来事から私はコーディ
ネーターを降りようと思いました。
次に何をするのかを決める間「プール」と呼ばれ
る期間があり、私は仕事をせずに気の向くままに
毎日過ごすことになりました。
この時、それまで自分がしていた仕事と周りとの
関係、それにいかにアイデンティティーを築いて
すべてが突然無くなって、まるで根無し草のよう
にふわふわと心もとなく、何のために自分が存在
しているのか分からなくなるほど混乱してしまっ
たのです。
瞑想するための素晴らしい環境にありながら、そ
うしたことが起きたことはとてもショックなこと
でしたし、自分のマインドの習性を見る厳しいチ
ャレンジでした。
ですから探究者であっても、知らず知らず身に着
けてしまう、そうしたアイデンティティーには覚
めていなければなりません。
さて、近年のSNSの普及は、産業革命以来の、大
きくアイデンティティーを揺るがす出来事だと言
われています。
バーチャルの世界では、家でも職場でもない、別
の自分を持つことができるようになりました。
自由に簡単にイメージを作り出すことが可能です。
ブログやホームページ、フェイスブックやLINE、
ツイッターやインスタグラム―。
聞いて驚いたのですが、中高生でも複数のアカウ
ントを持っている人がほとんどで、4、5個のアカ
ウントを使い分けていることも珍しくないのだそ
うです。
友好関係に合わせて複数のパーソナリティーを使
い分ける時代―そんな時代に「自分は誰か」を問
いかけることはどれほどの重要性を持っているこ
とでしょうか。
さらに来るAIの時代には人間とは何かが問われる
ことになるでしょう。
現代のVUCAワールド(Volatility/変動・Uncerta
inty/不確実性・Complexity/複雑性・Ambiguity/
あいまい性)において、自分は誰かを知ること、
それは必須のことであると言えるでしょう。
ユニティインスティチュートのエッセンシャルリ
ビングは、私たちの存在を生のあらゆる方面から
見つめることを学ぶ、非常に洗練されたコースで
何も遮断せず抑圧せず隠さず、まるごとの生の只
中で自分は本当には何者なのかを知る術を学ぶこ
とができる機会は、そうありません。
また書籍「悟りのシンクロニシティ」を手に取る
ことができます。
日常を送りながら、日々直面する外側と内側に向
き合う方法が詳しく分かりやすく書かれています。
たくさんのエクササイズがイラストとともに丁寧
に紹介されていて、ガイデッドのCDも付いていま
す。
広島でも再び「悟りのシンクロニシティ」の読書
会が始まりました。
3期目です。
毎回、およそ半年かけて読み進め、互いが体験を
シェアするというスタイルをとっています。
3回目だった先日は、「内なる本質」について話
し合う中で「これまで続けてきたマインドの習慣
を本当に手放したい」と、皆が思っていること、
そしてそれを互いにサポートし合うことを確認し
合いました。
読書会が終わるころには、それぞれがどうしてい
るか楽しみです。
追記:6月10日に教育とマインドフルネス を考え
る講演会とパネルディスカッションがあります。
こちらから詳細がご覧になれます。お近くの方は
どうぞ会場に足をお運びください。
https://peraichi.com/landing_pages/view/mindfulness-hiroshima
最近のコメント