ハート瞑想を続けていくうちに

  ハート瞑想に出会い、  ハートからピアノを教えることの喜びを  以前にも語っていただいたふみえさん。    その後もさらに内側への探求を続け、ハートとの  つながりを日々、深めてこられています。    「ハート瞑想を続けていくうちに」を  ふみえさんに語っていただきました。    どうそお楽しみください。          ☆ ☆ ☆    毎年春、神奈川県逗子市で  『小さな小さなピアノ発表会』  が開かれています。    知的障害のあるお子さんや成人の方たちの  音楽の発表会で、特別な時の流れを感じる愛に  あふれたコンサートです。    主催者はF君のお父さん。    F君は、私の大学卒業後の初めてのピアノの  生徒です。    その時F君は6歳。  音楽の大好きなとっても元気な重度自閉症の  男の子でした。    最初はなかなかピアノの前に座ってくれなくて、  何をしたらよいのか分からなかったけれど、    ある時チューリップのドレミが弾けたことから  流れ出し、1年後にはきらきら星を両手で弾いて  いました。    それからしばらくして、私は事情があって  逗子を離れることになったのですが、  そのあと私のレッスンを参考にしながら  お父さんがレッスンを続けてくださり、  レパートリーを増やしていきました。    その噂が広がって、  お父さんは他の障害のあるお子さんも教えるよう  になって、やがて脱サラして障害児のピアノの  先生に転職してしまいました。    その『小さな小さなピアノ発表会』は  多くのボランティアに支えられ、今年30周年  を迎えました。    そして5月に記念パーティーが催され、  そこに私はF君の最初の先生として招待されて  挨拶をすることになりました。      その挨拶を依頼された時、また「嫌だなぁ」  という気持ちがわいてきました。    実は12年前、お父さんは  「僕もピアノが弾けたよ」(とびら社)という本  を書きました。    その出版記念パーティーでも挨拶をして、  なぜか泣いてしまった経験があるからです。    それは勿論感動の涙でもあったのですが、  後悔と自己否定の現れでもありました。      逗子での私といったら、  この世に女性として生まれたことを悔い、  一連の運命を恨み、自由がないと感じ、  劣等感や絶望感で崩れそうでした。    ですからF君との思い出を話す時、  必ず向き合わなければならない私の深い闇なの  です。    その闇にはずいぶん前から気付いていたので、  もう何度も癒したはずでしたが、  「嫌だなぁ」という気持ちを感じた時、  もう一度ハートでその闇に触れてみようと思い  ました。      ハートのスペースで受容的になって  更に深く入ってみると、そこには闇と言うより  混乱があるのを感じました。    自己主張をする自分、  型にはまろうとする自分、  いい人になろうとする自分、  反発する自分...    たぶんどれも嘘ではなかったはずだけれど、  どこかで自分を否定していたから、  あの頃は自分の人格が分からなくなっていたの  でしょう。    「若かったなぁ」  「エネルギーに溢れていたなぁ」  「一生懸命だったなぁ」  「結構楽しんでいたじゃないか」  などなど。    次々に肯定的な言葉が浮かんできて、  許しと共に涙が溢れてきました。      逗子では一緒に暮らしていたおば様がいました。    そのおば様の存在が私の運命に大きく影響して  います。    その存在があまりに重くて厳しくて恐ろしくて、  両親と同じくらい感謝しているはずなのに、  我慢することができませんでした。    しかしハートのスペースで  そこにも許しを感じた時、  あの恐ろしい厳しさの裏におば様の愛の表現が  あったことに気づき、また涙が溢れました。      運命のいたずらと半分絶望感を抱いていた逗子で  の暗い日常の中で、  私に存在感を与え、人の温かさを感じさせてくれ  たのはF君とご両親でした。    そして経験のない私を信頼してチャンスを与えて  くれました。    そのことで私はどんなに救われたでしょうか。  そしてF君のレッスンを一生懸命やりました。    私はハートのスペースで一生懸命だった自分に  価値を与えました。    すると、それすらも否定していたマインドの  ジャッジが消えていき、心からその時の自分を  愛する感覚になれました。    F君とご両親に出会ったことで学んだことや、  発表会での生徒さんたちの姿から気付かされる  ことは何事にも代えがたい貴重な経験ですし、    36年経った今でも変わらずに  私の存在を尊重して下さっていることに、  私はどんなに勇気づけられているでしょう。      ハート瞑想を続けていくうちに、  逗子での生活が感謝と共にとても大切な思い出に  変わり、皆さんに紹介したいというご両親の思い  に応えて、ご挨拶をさせて頂こうという気持ちに  変化していきました。    そしていよいよパーティーでの挨拶の時、  少し緊張はしていましたが、  会場の皆さんの視線を感じながら、  自分の呼吸を感じ、自分の声を聞きながら終える  ことができました。    私にとって、何か一つの大きな山を越えた実感を  得た経験でした。      それから数日後、面白い夢をみました。    以前は、おば様は私が何かをしようとする時に、  いつも私の前に立ちはだかる大きな壁のような  存在として現れていたのですが、    その時は小指の先くらいのちっちゃな赤ちゃん  の姿で、蜜蜂のように部屋の中を飛び回っていま  した。    時々パンツが脱げるので  笑いながらはかせてあげると、  「笑わないで!」  と言って私の指に噛みつくのですが、全然痛く  ないんです(笑)    そんな楽しい夢を見られるようになりました。    ふみえ記