それぞれのパンデミック論 その2

前回、100分deパンデミック論の前半について書いて、後半もすぐに書こうと思っていたのですが、忙しくしているうちに日が経ってしまいました。

記憶がだんだんと薄れていますが、覚えているところだけでも!

三人目は政治学者の栗原康氏、取り上げたのは『大杉栄評論集』です。

大杉栄と内縁の妻の伊藤野枝、アナキズムは無政府主義と思っていたのですが、そうではなくて、無支配主義ということなのですね。
栗原氏は、奴隷の心理なるものを取り上げていましたが、これは現代にも大いに当てはまるものだと思いました。
強者(権力者や支配者)への恐怖から、人は服従するようになるが、それがいつしか強者への追従がまっとうなもの、よいものであるという風になっていくというものです。
資本主義社会の構図では、例えばサラリーマンは、上司に従わないと首を切られるような弱者の立場であり、仕事を失うということはお金を稼げなくなること、すなわち死ぬという恐怖がある。そこから奴隷の心理が生まれる。
しかし、一生懸命働いて褒められたり認められれば、それは快感となり、一層身を尽くして働こうとする、それが奴隷の心理だというのです。

コロナ禍にあって、市民からの抗議の声が上がりにくい日本は、こうした心理下にある人が多いのではないか、経済を回すことが大切だと、あちこちで声高に言われている、これもまた、強者によって思い込まされているかもしれないのだというのです。

大杉栄は、人は他人の自我を自分のもののように思いこむことがあるといい、自分の意志に基づいた言動だと思っていても、実はそれは、社会が求めている役割を演じさせられていることもあるといいます。

アナキストの大杉栄と妻の伊藤野枝は、時の政府の目指していた未来にそぐわないため抹殺されました。彼らの作ろうとしていた未来は、もしかしたら、そのようになっていたかもしれないパラレルワールド、歴史の分岐点は、あちこちにあります。

最後、高橋源一郎氏が取り上げたのは、ジョゼ・サラマーゴの小説『白の闇』でした。
彼がノーベル文学賞を受賞する3年前に書かれた小説だそうです。
謎の感染症にかかって、みなが失明をする話です。
罹患者たちは精神病院だった施設に強制隔離されます。
カミュが『ペスト』で書かなかった、感染した者の立場で、パンデミックによって人間の本性が露わになっていきます。恐ろしくて読むのが怖いような本だと思いました。

本の題名の『白の闇』がどういう意味なのか、を考えてみるとどうか。
見えていると思っているのに、見えていない者たち。
私たちは本当に目が開いているのか、本当に見えているのか?

4人がそれぞれに本を紹介していく中で、お互いの考え方、感じ方を触発し合ったり、そうした反応が何よりも面白く感じました。

人は異なる考えを持ち、感じ方をし、ときに共感し、ときに反発するかもしれない、そんなエネルギーのダイナミズムをみているのも、とても面白かったです。

 

さて、こんなパンデミックに揺さぶられる日々の中で、こちらでは新しいプロジェクトが始まろうとしています。
ワンシードというNPO法人を10年前に立ち上げました。
3.11がきっかけとなって、瞑想と生活を統合して暮らす場作り、自然な自分に還り、自然と調和した在り方をサポートし合える場作りで始まりました。

ハート瞑想と、ハートのマインドフルネス、意識の多重構造を軸に、子どもが成長しながら自分自身に繋がることができるように、と、活動を続けています。

前回の投稿の中で、高橋源一郎氏が、「今では何でもかんでも外注になってしまって、仕事だけが残った。そこから降りる、というのもある。」ということをポツリと言われていましたが、まさしくそのように感じていました。

平和活動家であり環境活動家でもあるサティッシュ・クマール氏は、若い人に向かって、就職することを考えるな、と言っています。
「人は手を使って生きられるようになっている。自分の手で何ができるのか、考え、感じなさい。」ということを言っていて、そうした生き方を、これからの若い人ができればいいな、と思いました。

大杉栄のいうように、誰かの自我ではない、ほんとうに自分のものを見極めていく知恵を持つこと。
奴隷の心理によって生きるのではなく、生きることを自分の手の内に取り戻すこと。

サティッシュ・クマール氏がイギリスに創設した「シューマッハー・カレッジ」は素晴らしいな、とも思いました。そんなところが近くにあればいいな!

そんな一歩でも踏めたらと、ハートからの気づきをベースにした、親子の学び舎を作ることになりました。
クラウドファンディングで支援も呼び掛けているので、もしよかったら見てみてください。
こちらのサイトには、わたしたちの思いも綴っています。
私たちのMeditation in the Marketplaceです!
https://readyfor.jp/projects/81820