【WS】利他主義とコンパッションの違い

コンパッション(やさしさは)、誰かのために自分を犠牲にすることではありません。

利他主義とコンパッションの違いはなんでしょうか?

利他主義は「相手のためになる行為の結果」に注目します。
寄付をする、手を差し伸べる——行動が他人のためになっているかということが評価の基準になっています。

コンパッションでは「苦しみに気づき、自他ともに楽にしたいと願い、状況に応じて賢く応答すること」をいいます。
対象は他者だけでなく自分自身も含みます。だからコンパッションには、自己犠牲は必要ではありません。


むしろセルフ・コンパッション(自分を責めすぎない態度)と健全な境界(やさしくNOを言う)があることのほうが、思いやりを長続きさせることができます。

では、なぜコンパッションが人生に必要なのでしょう?

理由はシンプルです。
私たちは日々、思いどおりにならない現実や人間関係と向き合っています。
そこで役立つのは「正しさを競う力」より、感情に飲み込まれずに「選び直す力」です。

コンパッションは、
気づく(今つらい)
温かさを向ける(自分も人並みに優しく扱う)

適切に行動する(言い換え・頼み方・境界)ことで、「反射」することから「応答」することができるようになります。
その結果、衝突することは減り、ぶつかっても修復することが早くなり、夜は緊張がほどけて眠りが深まりやすくなります。


外側が変わらなくても、内側の選び方は今日から変えられます——これがコンパッションの実利です。

この考え方には脳科学の裏づけもあります。
共感そのもの(相手の痛みに同調する)は時にストレス反応系を高め、疲弊を招きます。いわゆる「共感疲労」です。
ところが、共感に温かい意図(楽にしたい)と行動の選択が伴うコンパッション状態では、親和・報酬ネットワーク(たとえば内側前頭前皮質や線条体)や自律神経の落ち着きを示す指標(心拍変動など)が高まりやすいことが報告されています。

つまり、思いやりは“良いことを頑張る”だけでなく、やさしい行動そのものが心地よい手応えを生み、続けやすくなる設計なのです。

また、呼吸への注意や身体感覚に戻る練習は、交感神経の過剰な高ぶりを鎮め、前頭前野による感情調整を助けます。
これが「反射→一呼吸→選択」という回路を太くします。


セルフコンパッションは「利己的にならない?」と疑問に思う人いるかもしれませんが、大丈夫です。
セルフ・コンパッションは利己主義ではありません。自分を丁寧に扱うほど心の余白が生まれ、むしろ他者へ向ける優しさが増えることが研究でも示唆されています。

反対に、自己犠牲は短期的には美徳に見えても、燃え尽きを招き、やがて人にも自分にも厳しさとして返りがちです。
続けられる優しさこそが、家族にも職場にも恩恵を広げます。
 
外側を変えられない日も、内側の選び方は今日から変えられます。
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あなたの毎日に、静かな軽やかさと、長く続く温かさを。

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